腕を上げると肩が痛い|考えられる病気と治療法・受診の目安
「洗濯物を干すときに肩がズキッと痛む」「腕をまっすぐ上げられない」といった症状はありませんか?
この記事では、「腕を上げると肩が痛い」という症状に特化し、原因・セルフチェック・放置のリスク・整形外科での治療方法まで詳しく解説します。
腕を上げると肩が痛いときの代表的な症状
「腕を上げると痛い」と感じるとき、どのような動作で痛みが出るのかを具体的に確認することが大切です。痛みが出るタイミングや動作によって、原因となる病気の見当をつけやすくなります。
どんな動作で痛みを感じる?
以下のような日常動作で肩に痛みを感じる場合は、肩関節や周囲の筋・腱に問題が生じている可能性があります。
✅髪を結ぶ
✅洗濯物を干す
✅コートを着る
✅脱ぐエプロンの紐を後ろで結ぶ
✅電車のつり革につかまる
片側だけ?両側?痛みのパターンについて
痛みが出る側によって、整形外科的な原因か、内科的な疾患かを見分けるヒントになります。
左肩だけ or 右肩だけ痛い場合
腱板損傷や石灰沈着性腱板炎の可能性あり。
両肩に出る場合
内科的疾患やリウマチも考えられます。
原因として考えられる主な病気・障害
「腕が上がらない」「肩を動かすと鋭く痛む」など、肩の痛みの原因にはさまざまな病気が隠れている可能性があります。
ここでは、整形外科でよく見られる代表的な疾患をご紹介します。それぞれの特徴を知ることで、適切な対応がしやすくなります。
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)
中年以降に多くみられる肩関節の炎症で、関節を構成する腱や靭帯、関節包が炎症を起こすことで、動かしたときに痛みを感じたり、腕が上がらなくなったりします。症状は自然に改善することもありますが、早期にリハビリを開始することで回復期間を短縮できる場合もあります。
腱板損傷(腱板断裂)
肩の深部にある筋肉(腱板)が断裂してしまう状態で、転倒や重い物を持ち上げたときなどに起こりやすいです。年齢とともに筋肉が弱くなることで、軽微な動作でも損傷することがあります。痛みだけでなく、腕を上げにくくなるなどの可動域制限が生じます。
頚椎疾患(放散痛)
首の骨(頚椎)や椎間板に異常があると、神経が圧迫されて肩や腕に痛みやしびれが出ることがあります。肩自体に問題がなくても、頚椎のヘルニアや脊柱管狭窄症が原因のケースもあるため、整形外科での正確な診断が重要です。
石灰沈着性腱板炎
肩の腱にカルシウムが沈着して炎症を起こす病気です。急激に強い痛みが出ることが多く、夜間の痛みや肩の動かしづらさが特徴です。X線検査で石灰の沈着を確認できる場合があり、薬物療法や注射による治療で改善を図ります。
セルフチェック|病院に行くべきかの目安
肩の痛みは一時的なものだと思って放置しがちですが、症状によっては早期の整形外科受診が必要なケースもあります。
以下のような症状が当てはまる場合は、自己判断せず専門医に相談することをおすすめします。
以下の症状がある方は整形外科の受診を
✅夜、痛みで目が覚める
✅腕を上げる動作ができない
✅反対の手で支えないと上がらない
✅肩に力が入らない
✅発症から2週間以上改善しない
当院での診療の特徴
丁寧な問診と身体検査
診察ではまず、患者さまの症状や痛みの発生状況について詳しくお伺いします。どのような動作で痛むか、いつから症状が出たのか、日常生活での困りごとなどを丁寧にお聞きし、痛みの背景を明らかにします。
続いて身体検査では、肩の可動域や痛みの位置、力の入り具合などを確認し、必要に応じて整形外科的テストを実施します。
X線検査(レントゲン)
X線検査は、肩関節の骨構造や石灰の沈着(石灰沈着性腱板炎)の有無を確認するための基本的な検査です。骨折や変形、関節の隙間の異常などがわかり、腱や靭帯の炎症が骨に影響を及ぼしていないかを評価します。
エコー診断による即時評価
超音波検査(エコー)は、筋肉・腱板・滑液包などの軟部組織をリアルタイムで確認できる優れた診断ツールです。腱板損傷や滑液包炎、石灰沈着などの異常をその場で確認できるため、速やかな治療判断につながります。
薬物療法と注射治療
症状に応じて、鎮痛薬や湿布による保存的治療を行います。痛みが強い場合や急性炎症がある場合には、ステロイド注射やヒアルロン酸注射を行うこともあります。これらは即効性が期待できる治療法です。
理学療法士による個別リハビリ
当院では国家資格を持つ理学療法士が常駐し、痛みの軽減や再発防止を目的としたリハビリテーションを提供しています。肩の可動域を広げる運動やストレッチ、筋力をつけるトレーニングなど、個々の状態に応じたプログラムを作成し、継続的な改善をサポートします。
MRIなど精密検査が必要な場合
症状の程度や診察所見によっては、より詳しく内部構造を評価するMRI検査が必要となることもあります。
その場合は、提携医療機関と連携し、的確な診断と治療方針の決定を行います。
当院で行う肩の痛みに対する治療法
薬物療法
まずは鎮痛薬や湿布などを用いて炎症や痛みを和らげる治療を行います。
必要に応じて、筋肉の緊張をほぐす筋弛緩薬を使用することもあります。初期症状や軽度の肩痛に対して有効です。
理学療法(リハビリテーション)
理学療法士によるストレッチや可動域訓練、温熱療法などを通じて、肩関節の動きを改善し、痛みの軽減を目指します。五十肩や腱板損傷のリハビリに特に有効で、段階的な回復を支えます。
ハイドロリリース(筋膜リリース)
肩周囲の筋膜の癒着が原因となっている場合、ハイドロリリースという注射治療を行うことがあります。エコーで筋膜の状態を確認しながら、生理食塩水と薬剤を注入し、可動域の改善と痛みの緩和を図ります。
注射治療(ステロイド・ヒアルロン酸)
炎症が強く、日常生活に支障が出ている場合には、肩関節内や滑液包にステロイド注射を行うことがあります。短期間での痛み軽減が期待できます。
再発を防ぐための生活指導
当院では、再発を防ぐための姿勢改善や自宅でできるストレッチ指導も重視しています。通院が難しい方には、オンラインでのアドバイスやプリント資料の提供も行っています。
「肩が上がらない」「夜間にズキズキする」などの症状がある方は、我慢せずご相談ください。
状態に応じた最適な治療をご提案いたします。