若者でも起こる不整脈とは
不整脈は年齢に関係なく起こり得ます。
特に若年層では、①脈が一瞬飛ぶ(期外収縮)、②急にドキドキが続く(発作性上室性頻拍)、③運動時やストレス時の動悸といった形で自覚されることが多く、受験・仕事・部活などの生活場面で気になる症状につながります。次のような危険サインがある場合は、年齢に関わらず注意が必要です。
- 誘因なく脈拍が120以上になり数分~数十分続く
- 脈拍が40以下になり、息切れ・めまい・失神を伴う
- 胸痛・冷汗・意識消失を伴う動悸
- 家族に突然死や不整脈の既往がある
いずれかに当てはまる場合は早めの受診をおすすめします。
若者で不正脈になりやすいタイプと特徴
期外収縮(脈が飛ぶ感じ)
ストレス・睡眠不足・カフェインで増えやすい一過性の不整脈。多くは良性ですが、頻度が多い・胸痛や息切れを伴う場合は評価が必要です。
発作性上室性頻拍(PSVT)
突然始まり突然止まる強い動悸。若年で最も多い持続性頻拍の一つ。発作中の脈は120~200/分になることがあります。
心房細動(まれではあるが、注意)
若者でも甲状腺の異常、アルコール多飲、感染後などを契機に起こることがあります。動悸・息切れ・胸の違和感が続くときは要受診。
先天性の電気回路の異常等
WPW症候群、QT延長症候群など。家族歴がある、運動時の失神歴がある場合は専門評価が必要です。
若者に多い原因とセルフチェック
次の項目に当てはまるほど、不整脈が起きやすくなります。心当たりがあれば生活調整と併せてご相談ください。
睡眠不足・昼夜逆転
自律神経が乱れて拍動が不安定に。まずは睡眠時間の確保を。
カフェイン・エナジードリンク
短時間に多量摂取で動悸・頻拍の引き金に。1日の上限量を意識しましょう。
脱水・過度な有酸素/サウナ
水分・電解質不足は期外収縮を増やします。運動・入浴前後の補給を。
ストレス・不安
交感神経優位で動悸が増加。深呼吸や休憩、軽い有酸素運動が有効です。
飲酒・喫煙・VAPE
「ホリデーハート(多飲後の不整脈)」に注意。禁煙・節酒を推奨。
貧血・甲状腺・感染後
原因が隠れているケースも。動悸が続く/悪化する場合は検査を。
若者の不整脈の主な原因
生活要因(睡眠不足、カフェイン/エナジードリンク、脱水、ストレス、飲酒・喫煙)に加え、基礎疾患(貧血、甲状腺機能異常、電解質異常、感染後の心筋炎など)、先天的要因(異常伝導路、遺伝性不整脈)も関与します。症状が反復する・悪化する・家族歴がある場合は放置せず評価が大切です。
当院で行う不正脈の検査
発作性でオフィス心電図に映りにくい不整脈は、日常生活中の記録がカギです。当院では次の検査を症状に応じて行います。
12誘導心電図
体の表面に電極を貼り付け、心臓の電気的な活動を記録する最も基本的な検査です。検査時間は数分程度で、痛みを伴わず簡便に実施できます。
24時間心電図(ホルター)
小型の心電計を24時間装着し、日常生活での心臓の状態を継続的に記録します。発作性の不整脈や、症状と心電図の関連を調べるのに適しています。
主には動悸や胸痛の原因を調べるために使用します。症状が出現した時の心電図を記録できるため、日常生活下での症状の原因を調べることができます。当院では小型化された24時間心電図(ホルター)を使います。入浴中やランニング中も装置し記録することが可能です。そして翌日に外してその場で循環器内科専門医が当日解析、結果を説明します(通常のクリニックでは解析を外部委託しているため結果説明に1週間程度かかり、2回通院する必要があります。)
不正脈の治療と生活のコツ
薬物療法
不整脈には、心拍が速くなる頻脈性不整脈と、心拍が遅くなる徐脈性不整脈があります。当院では、主に不整脈を抑える薬や再発を予防する薬による治療を行っています。症状や状態に応じて、さらなる専門的な治療が必要な場合には、信頼できる専門医療機関をご紹介いたします。
カテーテルアブレーション
不整脈の原因となる場所を特定し、細い管(カテーテル)を使って心臓内を治療する方法です。カテーテルから高周波や冷却エネルギーを送り、異常な電気信号を止めることで不整脈を改善します。この方法は薬物療法とは異なり、不整脈の原因そのものにアプローチし、根本的な解決を目指す治療法です。この治療が適していると判断する場合には、専門医療機関へご紹介いたします。
ペースメーカー・ICD
心拍が遅くなる徐脈性不整脈により、めまいや失神が起こる場合に使用します。小型の装置を胸に植え込み、電気刺激を送ることで心臓のリズムを整えます。最近では、MRI検査にも対応可能なペースメーカーが普及しています。必要と判断される場合には、迅速に適切な医療機関をご案内し、連携して治療を進めてまいります。
よくある質問(若者向け)
若者の不整脈は放っておいても大丈夫?
一過性で問題ない場合もありますが、反復・悪化・失神や胸痛を伴う場合は放置せず受診を。基礎疾患や遺伝性の可能性が隠れていることがあります。
運動や部活はしてもいい?
多くは軽~中等度の有酸素運動が可能です。発作性の強い動悸、胸痛、めまい・失神がある場合は運動前に評価を受けてください。
エナジードリンクやカフェインはどれくらいまで?
個人差はありますが、短時間の多量摂取は動悸・頻拍の誘因になります。症状がある方は控えめにし、分散して摂る・就寝6時間前以降は避けるのが目安です。
突然死につながる危険なサインは?
- 運動時や安静時の失神・意識の遠のき
- 強い胸痛や冷汗を伴う動悸
- 家族に若年の突然死・重症不整脈の既往
いずれかがあれば早急に受診してください。