循環器専門医が、糖尿病を診る理由
糖尿病の治療の本当の目的は、血糖値を下げることではありません。心筋梗塞や脳梗塞など、命に関わる血管の病気を防ぐことです。
糖尿病と診断された方の多くは、将来的に心疾患を発症するリスクが一般の方より2〜4倍高いとされています。つまり、血糖値の管理は「心臓・血管を守るための手段」でもあります。
院長は循環器内科専門医(心臓・血管の専門家)であり、糖尿病を「数値の管理」だけでなく、将来の血管病を防ぐ視点で診療しています。血糖値・血圧・コレステロールを総合的に評価し、心筋梗塞・脳梗塞のリスクを下げることを治療の軸としています。
また、院内には理学療法士・管理栄養士も在籍しており、薬だけに頼らない治療を患者さんと一緒に進めることができます。
糖尿病とは
膵臓から分泌されるインスリンの働きが不十分になり、血液中の血糖値が慢性的に高くなる病気です。
日本人では2型糖尿病が大多数を占め、過食・肥満・運動不足・ストレスなどの生活習慣が発症に深く関わっています。
国内の糖尿病患者数は約1,000万人、予備軍を含めると約2,000万人に上るとされており、非常に身近な病気です。自覚症状がないまま進行することが多く、気づいたときには血管・神経・腎臓などにダメージが蓄積しているケースも少なくありません。
「のどが渇く」「疲れやすい」「尿の回数が増えた」といった症状がある方は早めの受診をお勧めします。
主な検査値の目安
| 検査項目 | 内容 |
|---|---|
| ヘモグロビンA1c(HbA1c) | 過去1〜2ヶ月の血糖の平均状態を反映。6.5%以上で糖尿病型とされ、合併症の進行と深く関係します |
| 早朝空腹時血糖値 | 8時間以上絶食後の血糖値。126mg/dL以上が糖尿病の診断基準のひとつです |
| 随時血糖値 | 食事時間に関係なく測定した血糖値。200mg/dL以上は要注意です |
治療方法
生活習慣の改善(治療の基本)
糖尿病治療の基本は生活習慣の見直しです。薬を使う場合も、食事・運動の改善が土台になります。
逆にいえば、生活習慣を整えることで薬の減量や中止を目指すことも十分可能です。
食事療法
糖質の摂取量をコントロールしながら、食物繊維が豊富な野菜・海藻・きのこ類を積極的に取り入れます。食べる順番(野菜→たんぱく質→糖質)を意識するだけでも食後血糖値の上昇を抑える効果があります。
当院では管理栄養士が在籍しており、「何を食べてはいけない」ではなく、続けやすい食べ方・レシピの工夫など個別の栄養相談が可能です。
運動療法
早歩きなど中等度の有酸素運動を週150分程度、加えて筋力トレーニングを週2回行うことが目安です。筋肉量が増えると基礎代謝が上がり、インスリンの効きも改善します。
当院では理学療法士がパーソナルトレーニング形式で、一人ひとりの体力・体型・生活習慣に合わせた運動指導を行っています。
薬物療法
生活習慣の改善だけでは血糖コントロールが不十分な場合、または診断時からHbA1cが高い場合には薬物療法を組み合わせます。症状・体質・合併症リスクに応じて以下のお薬を使用します。
経口血糖降下薬
メトホルミン・スルホニルウレア・DPP-4阻害剤などが代表的です。インスリン抵抗性の改善や、膵臓からのインスリン分泌促進など、それぞれ異なる作用があります。
GLP-1受容体作動薬
食後の血糖値上昇を抑えるとともに、食欲を抑制する効果もあります。体重減少効果も期待でき、肥満を伴う糖尿病の方に特に有用です。
SGLT2阻害薬
腎臓での糖の再吸収を抑え、尿として糖を排出することで血糖値を下げます。血糖改善に加え、心臓・腎臓への保護効果も報告されており、循環器専門医の立場からも注目しているお薬です。
インスリン治療
経口薬だけでは血糖コントロールが難しい場合、または糖尿病が進行した場合にはインスリン注射が必要になります。当院では持効型インスリンを処方しています。ボーラス治療・強化療法が必要な場合は専門医療機関へご紹介します。
BOT(Basal Supported Oral Therapy)療法
経口薬に加えて、1日1回の持続型インスリンを組み合わせる治療法です。
「インスリンを使うほどではないが、経口薬だけでは空腹時血糖が高い」という方に適しています。
メリット
- 1日1回の注射で、生活スタイルに合わせた時間に打てるため導入しやすい
- 特に空腹時血糖値の管理が改善しやすい
- 経口薬との併用でより個別化した治療が可能
- 強化療法と比べて低血糖のリスクが低い
デメリット
- 注射が必要なため、針への抵抗感がある方もいる
- 定期的な血糖値のモニタリングが必要になる
当院で糖尿病を診るメリット
糖尿病はさまざまな病気を合併しやすい疾患です。一般的には複数の病院をかけもちすることも多いですが、当院では循環器・整形外科・リハビリが一体となった総合的なサポートを1つのクリニックで受けることができます。
心臓・血管への対応
循環器専門医の院長が診察するため、糖尿病による心疾患リスクの評価・管理から、狭心症や心筋梗塞を発症した後の外来リハビリまで一貫して対応できます。「血糖だけ診て心臓は別の病院」という分断がありません。
整形外科領域への対応
糖尿病に合併しやすい肩関節周囲炎(五十肩)・骨粗鬆症・手根管症候群なども、院内の整形外科で同時に診ることができます。
通院先をまとめることで、患者さんの身体的・時間的な負担を大きく減らせます。
リハビリ・運動療法
理学療法士による運動療法を院内で受けられます。糖尿病の方は運動習慣がつきにくいケースも多いですが、専門家のサポートのもとで安全に・継続的に取り組めます。運動によって代謝が改善し、薬の減量・中止を目指せるケースもあります。
糖尿病予備軍と言われた方へ
健診や人間ドックで「血糖値が少し高め」「HbA1cが引っかかった」と言われたことはありませんか。この段階は「糖尿病予備軍(境界型)」と呼ばれ、まだ糖尿病の診断はついていないものの、放置すると数年以内に糖尿病へ進行するリスクがあります。
しかし、予備軍の段階こそ最も介入効果が高い時期です。この時期に生活習慣を見直すことで、糖尿病の発症を防いだり、大きく遅らせたりすることができます。
予備軍から糖尿病へ進行させないために
体重管理
体重をわずか3〜5%減らすだけでも、血糖値・HbA1cの改善が期待できます。無理なダイエットではなく、食事と運動を組み合わせた「続けられる減量」が大切です。
食生活の見直し
糖質の量とタイミングを意識するだけで、食後の血糖値スパイクを抑えられます。管理栄養士による個別の食事相談もご利用いただけます。
定期的な運動
週2〜3回の軽い運動でもインスリンの効きが改善します。理学療法士が体力に合わせたプログラムを提案します。
ダイエット外来(肥満外来)のご案内
当院ではダイエット外来を設けており、体重管理を医学的にサポートしています。「自己流のダイエットがうまくいかない」「何から始めればいいかわからない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。予備軍の段階での相談も大歓迎です。
費用の目安
| 区分 | 費用(3割負担) |
|---|---|
| 初診 | 約6,000円(初診料・検査込み) |
| 再診 | 約2,000円/月 |
初診時は血液検査・尿検査・血圧測定などを行い、現在の状態を総合的に評価します。治療開始・変更後は1〜3ヶ月後に採血で効果と安全性を確認します。安定後は2ヶ月ごとのフォローが一般的です(病状に応じて調整します)。
まとめ
糖尿病は、放置すると心筋梗塞・脳梗塞・腎不全・失明など、命や生活の質に関わる深刻な合併症につながります。
一方で、早期に適切な治療を始めれば、生活習慣の改善によって薬を減らしたり、中止できるケースも十分あります。「まだ大丈夫」と思っているうちに、血管のダメージは静かに進んでいます。
当院では循環器・整形・リハビリが一体となって、トータルで患者さんをサポートします。すでに診断されている方はもちろん、健診で引っかかった方・予備軍と言われた方も、まずはお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
糖尿病と診断されていませんが、血糖値が高めと言われました。受診できますか?
はい、受診いただけます。予備軍(境界型)の段階での介入が最も効果的です。ダイエット外来・栄養相談・運動指導など、発症予防に向けた取り組みを一緒に進めましょう。
薬を始めたら一生飲み続けなければなりませんか?
必ずしもそうではありません。生活習慣の改善・体重減少によって血糖値が安定すれば、薬の減量や中止を目指すことができます。担当医と相談しながら進めていきます。
インスリン注射は痛いですか?怖いのですが。
現在の注射針は非常に細く、慣れると痛みをほとんど感じない方がほとんどです。導入時は看護師が丁寧にご説明しますので、不安な点はお気軽にお申し付けください。
他院で糖尿病の治療を受けていますが、転院できますか?
可能です。これまでの検査データや処方内容をお持ちいただければ、スムーズに引き継ぎできます。整形外科や循環器のフォローも同時に希望される方はぜひご相談ください。
監修者プロフィール
院長 中嶋 哲史(Tetsufumi Nakashima)

内科・循環器・整形外科の幅広い診療経験をもとに、地域に根ざした医療を提供しています。
診療分野
- 整形外科
- 関節リウマチ
- 循環器内科
- 生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)
所属学会・資格
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 日本循環器学会 循環器専門医
- 日本整形外科学会 整形外科専門医
監修医療機関
なかしま内科循環器・整形外科クリニック(西宮院)
内科・循環器内科・整形外科を中心に、地域に根ざした医療を提供しています。
最終更新日:



